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宝塚の民話・第2集の15

ID番号 1003695 更新日  平成26年11月10日  印刷

宝山寺のケトロンまつり(ほうざんじのけとろんまつり)

むかしむかし、紀州有田(きしゅう ありた)(注1)の村のお寺に立派な十一面観音菩薩がありました。このお寺は海岸べりにたっており、村人達の信仰を集めていましたが、ある日、この観音様から「海へ出ると災難(さいなん)がある。山へのがれなさい」とのお告げがあったので、村人達は山の方へ急いで避難(ひなん)しました。

昼近くになると「ゴーッ」という山鳴りとともに、大地が大きくゆれ地震が起こりました。それからしばらくすると、沖の方から津波(つなみ)が押し寄せてきたのです。海岸近くにあった村の家々はあっという間に波に飲み込まれ、壊されてしまいました。
村人達はその様子を山の上から息を飲んで見守っていましたが、やがてわれにかえり、命を救われたお礼にと、お寺へ行きました。しかし、そのお寺も津波にさらわれ跡形(あとかた)もありませんでした。
村人達は大事な観音様を見つけようと、津波がおさまった後、舟を出してさがしましたが、見当たりません。

その数年後のことです。
摂津の鳴尾(なるお)(注2)の浜に信心深い海女(あま)が住んでいました。彼女は海へ出て漁をしていますと、岩場のかげで何か光るものが見えました。不思議に思い近づいて見ると立派な十一面観音です。「これは日頃の信心が通じ、仏様をさずかることができたのだ」と思い、その観音様を家に持ちかえり、灯明(とうみょう)をともして大切にまつっていました。

宝山寺のケトロンまつりの挿し絵

それからすこし後に、この海女のすんでいる付近で悪病(あくびょう)がはやり、皆が大変困っていましたが、海女の家に観音様があることを聞いた村人達は、「あの観音様にお祈りすれば治してもらえるに違いない」と信じて願をかけました。
すると、観音様の御利益で悪病は次々とおさまり、村人達は大喜びです。
そこでこの観音様にお礼をしようということになりましたが、貧しい村のことでお堂を建てることもできません。しかたなく皆がよって灯籠(とうろう)を作り、お供物を供えておまつりをしました。
おまつりの日が終わりに近づいた時、一羽の白い鳥がどこともなく現れました。村人達はあっけにとられていましたが、白い鳥は観音様をくわえると北の方へ飛び去りました。

やがてその白い鳥は、宝塚の北部の玉瀬(たまぜ)にある古宝山(ふるぼうざん)(注3)に建てられていたお堂に飛来し、そのお堂に観音様を置いてたち去りました。その夜、その観音様に気づいた玉瀬の村人達は大事におまつりをしたそうです。

またある年の夏、西谷の大原野の村で病がはやったそうです。大原野の村人達は霊験(れいげん)のあるといわれる観音様のいる古宝山に向かい、病が治るように拝みました。するとその心が通じたのが、天馬(てんま)が現れ、観音様を連れて行かれました。途中、「馬の足跡」とのちにつけられた岩上に下り、さらに宝山寺(ほうさんじ)(注4)の下にあるにごり池で馬の足を洗い、宝山寺に入ったというのです。

大原野の人々は鳴尾の村のできごとを伝え聞いていましたので、大きな灯籠をつくり、観音様にお供えし、病気が早く治ることを祈願したところ、病はみるみるうちにおさまったということです。このことから大原野の村人達は毎年、八月十四日の夜、「ケトロンまつり」という灯籠会(とうろうえ)をして、お祭りをするようになりました。

このお祭りは九人ずつ二組にわかれた少年達が、これまでの話に因み、海女の黒髪をまねた黒い帯を背中に垂らし、大きな灯籠を先頭に、海女の磯笛(いそぶえ)に似せて「ヒュー」という声を出し念仏をとなえ、ゆっくりと山門を登って行くというもので、今でも念仏踊り(ねんぶつおどり)として毎年、八月十四日に宝山寺で行われています。
また、この「ケトロンまつり」の名は、お祭りに使う鉦(かね)や太鼓(たいこ)の音にちなんでつけられたということです。

注釈
(注1)紀州有田(きいありた)
現在の和歌山県有田付近をさす。

(注2)摂津の鳴尾(せっつのなるお)
現在の兵庫県西宮市鳴尾浜付近。

(注3)古宝山(ふるぼうざん)
宝塚市の北部西谷の玉瀬の西側にある標高459.4メートルの山。

(注4)宝山寺(ほうざんじ)
宝塚市大原野にある真言宗のお寺。本尊は十一面観音菩薩。古来、古宝山より移転したと伝えられれる。村に伝えられる中世からの古い灯籠会のケトロン祭りは、宝塚市の無形民俗文化財に指定されている。

挿し絵は、市内在住・在学の市民、児童・生徒から募集したものです。

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