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宝塚の民話・第2集の6

ID番号 1003708 更新日  平成26年11月10日  印刷

不思議な力の泰仁和尚(ふしぎなちからのたいにんおしょう)

不思議な力の泰仁和尚の挿し絵

多田源氏(ただげんじ)、源満仲(みなもとの みつなか)(注1)から七代目の源頼盛(みなもとの よりまさ)はなかなか子どもに恵まれなかったので、毎日のように中山寺に詣で、ようやく男の子が生まれました。
授かったこの子は「観音様の化身(けしん)かもしれない」と思われるほど幼い頃から賢い上に、仏の教えを信ずることが人一倍強い子どもでした。

ある日、両親に自分の考えを話し、出家(しゅっけ)したいと願い出ました。
「今の世の中、天寿(てんじゅ)をまっとうして死ねる人は幸せ者です。昨日故郷に錦を飾って、栄華(えいが)を誇った人も、今日は罪をきせられて島流しの憂(う)きめにあいます。世の移り変わりはわからないものです。今や天皇から庶民(しょみん)にいたるまで浮き沈みが激しく、昨夜は御殿でみた楽しい夢も、一夜明ければ刀で斬られているかもしれません。はじめは鼠(ねずみ)を追いかける猫のようでも、終わりは鷹に狙われる雀(すずめ)のようになることがあります。私はこの世では何のぜいたくや名誉も望みません。父上と母上にお許しがいただけるなら、仏門(ぶつもん)に入り、祖先や親族の霊を弔いたいと思います。どうかお許し下さい」と打ち明けました。

源氏の一族のかなめとなり、家を継いでもらわなければならない長男の申し出に両親は悩みましたが、思いのほか意志が固く、思いとどめさせることは無理とさとり、家は弟の行綱(ゆきつな)に継がせることとし、出家の道を許しました。
多田源氏の菩提寺(ぼだいじ)(注2)、中山寺に入門して泰仁(たいにん)という名もらい、髪を落としたのは大治三年(1128)のことでした。修行の道を歩みはじめた泰仁は誰よりも強い意志を通し、厳しい苦行に耐え、真言密教の奥義(おうぎ)を自らのものとしましたので、阿闍梨(あじゃり)(注3)の称号をもらいました。

時が過ぎ、泰仁阿闍梨が山崎街道を旅していた時のことです。数人の盗賊(とうぞく)が現れ、泰仁の持ち物を全て奪い取り、着ている袈裟(けさ)まではぎ取りました。なすがままにされていた泰仁は、おもむろに立ち上がると、盗賊達に向かい、「世の中が戦乱でいかに荒れているとはいえ、仏に仕える僧まではずかしめるとは。私はこうして罪を重ねているそち達の行いが悲しい。僧侶として裸で旅をするわけにもいくまい。袈裟だけでも返してくれないだろうか」と説きました。

しかし、盗賊たちは知らぬ顔で情け容赦(ようしゃ)なく、「はやく立ち去るのじゃ、つべこべ言うと命までいただくぞ」と言い、刀を抜いてすごんできます。
「それならやむをえぬ」と、泰仁はおもむろに道端の石に腰かけると、ア・ウンの呼吸(こきゅう)(注4)とともに、あたりに散らばっている大小の石に向かい呪文を唱えました。
「われ今、はからずも盗賊のおどしにあっている。汝(なんじ)ら大小の石よ、なぜわが護衛(ごえい)を怠るや」と喝(かつ)をいれると、大小数百の石が一気に盗賊達に飛びかかったのです。

盗賊達はおそれおののき、命だけはお助け下さい。私共が悪うございました。このようなことは、二度と決して致しません」とひれ伏してあやまりました。
それならばと、泰仁が石に向かい一喝(いっかつ)すると、今まで飛びまわっていた大小の石は、うそのように静まってしまいました。
盗賊たちは泰仁阿闍梨の霊力(れいりょく)に驚き、今までの行いを反省し罪を詫びました。そして、まじめに働き、泰仁のいる中山寺の常夜燈(じょうやとう)(注5)にと、ごま油五石(約九百リットル)を奉納(ほうのう)するようになったということです。

注釈
(注1)源満仲(みなもとのみつなか)
九一七~九九七 平安時代の武将。摂津多田(現川西市)に居を構え、多田源氏と称した。狩猟を好み勇猛果敢で、よく領地を治めたという。多田院(現川西市の多田神社)に葬られる。

(注2)菩提寺(ぼだいじ)
一族代々が帰依(きえ)し、葬式や追善供養(ついぜんくよう)、法事などを行う寺。

(注3)阿闍梨(あじゃり)
師範たるべき、修行を積んだ高僧のこと。
密教で高僧を示す用語。

(注4)ア・ウンの呼吸(あ・うんの呼吸)
物事の初めと終わりをさす呼気と吸気のことで、密教の呪文に使う呼吸。

(注5)常夜燈(じょうやとう)
仏前や寺社に、一晩中つけておく燈明(とうみょう)、法灯のこと。

挿し絵は、市内在住・在学の市民、児童・生徒から募集したものです。

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