宝塚の民話・第1集の1
仁川の大池(にかわのおおいけ)
むかしから、池や沼には「ヌシ」といって水の精がいると言い伝えられています。
仁川(にかわ)にある鹿塩(かしお)の池のヌシは坊主頭だったので「坊主池(ぼうずいけ)」と呼ばれていました。
また、暑い夏がやって来ました。鹿塩の子ども達は今年もこの池で水浴(みずあ)びをしようとやって来ました。
昨年、池のヌシに水の底へ引きずり込まれ、もう少しでおぼれ死ぬところだった次郎坊(じろうぼう)は「今年もヌシが悪さしよるかもわからん。気いつけや」「こんど悪さしたら、みんなでこらしめたろうな」ごん太もひきずり込まれかかったことがあるのです。
遊びに夢中になり、ヌシのことを忘れてしまった時「キャー、助けてー」太郎坊の声です。
太郎坊の手が、水面から消える瞬間に次郎坊とごん太はやっとのことで助けることができました。
翌朝、里の子らが集まって相談が始まりました。
「このままでは安心して水浴びもできん」
「なんとかして、ヌシをこらしめねばならんぞ」
相談がまとまりました。次郎坊とごん太の腰に綱をしばり、二本の綱はよられて一本となり、里の子ら全員が持ちました。太郎坊が指揮者です。
次郎坊とごん太は長い一本の綱のはしをそれぞれ持ち、水の中に入り、おぼれかかるまねをしました。
するとどこからともなく、ヌシがやってきて、次郎坊の足をつかみました。間(かん)いっぱつごん太はヌシの回りを泳ぎ、綱でグルグル巻きにしました。太郎坊の合図で子どもらは、綱を引き始めました。
ヌシはとうとう岸に引きずり上げられてしまいました。
子どもらに囲まれたヌシは坊主頭をかきながら、「悪気(わるぎ)があってのことではないんや、君らも坊主頭やろ。それでな、おれの友達かと思い、遊びたかっただけなんや。これからは気いつけるさかい許してくれ。」と、あやまりました。
子どもらに許され池に帰ることになったヌシは、
「今度から池で泳ぐ時は、わしの友達と間違えんように、頭にトンボをのせといてくれや」といって帰っていきました。
それからは鹿塩(かしお)の里では「鹿塩のトンボ」といって、男の子が生まれると、頭にトンボを置いて、水難(すいなん)をはらう風習(ふうしゅう)があるそうです。
挿し絵は、市内在住・在学の市民、児童・生徒から募集したものです。
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