宝塚の民話・第1集の7

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ID番号 1003711 更新日  2014年11月10日

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武庫川堤の狐(むこがわづつみのきつね)

武庫川堤の狐の挿し絵

むかし、むかし、町村という呼び名(よびな)が無く、里(さと)とか郷(ごう)という呼び方をしていた時のことです。
武庫川(むこがわ)の堤(つつみ)には、たくさんの狐(きつね)や狸(たぬき)が住んでいて、よく悪(わる)さをしては、里の人達を困(こま)らせていたそうです。
ある夏の暑(あつ)い昼下(ひるさ)がり、一匹(いっぴき)の狐が暑さしのぎに水浴(あ)びでもしようと、武庫川堤の河原(かわら)に降(お)りて来ました。
ちょうどその時、里のお役人(やくにん)が五人、用があって向(むこ)うの岸に渡ろうと、がやがやわいわい言いながらやって来ました。

「チェッ邪魔(じゃま)しやがって。せっかく水浴びしようと思うとるのに。」。
狐はとがった口をもっと突(と)がらせ、ドロ ドロ ドロンと、アッという間(ま)に姿(すがた)をかくしてしまいました。
お役人達は、はしゃいで、
「カンカン照(で)りの好(よ)い天気。川は浅(あさ)いし、ぬれて歩くのもなかなか気持ちが良いものじゃ」五人はそれぞれに、ジャブ、ジャブと川を渡り始(はじ)めました。
ところが、突然(とつぜん)あたりがにわかにうす暗(ぐら)くなり、川の水が増(ふ)え始めました。
「ありゃ、これはどうした事(こと)だ。雨も降(ふ)らんのに川の水が増え始めたぞ。」
「ありゃ、大変じゃ」五人はあわてふためき、やあやあがやがや言いながら、着物の裾(すそ)を高くからげて、向(む)こう岸を目がけて、必死(ひっし)の思いで走りました。

ところが、いくら走っても向こう岸には一向(いっこう)に近付(ちかづ)きません。おまけに水かさは増(ま)すばかりです。
「助(たす)けてえ。このままでは溺(おぼ)れてしまう。」
その時、堤を通りかかった一人のお百姓(ひゃくしょう)さんが、ふと川の中を見ると、五人のお役人が水も無いのに裾(すそ)をからげて、同じ所を行ったり来たりの大騒動(おおそうどう)。
「ハハァン、また狐の仕業(しわざ)だな。」お百姓さんは笑(わら)いをこらえながら、
「お役人衆(やくにんしゅう)しっかりなされェ」と大声(おおごえ)でどなったら、五人のお役人はハッと気付(きづ)き、相手(あいて)のしぐさを眺(なが)めて、キョトンとしていたそうです。

このような話は、その頃(ころ)ちょくちょくあったそうです。

挿し絵は、市内在住・在学の市民、児童・生徒から募集したものです。

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