宝塚の民話・第1集の13

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ID番号 1003712 更新日  2014年11月10日

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放生池のスッポン

中山寺の山門(さんもん)の南に「放生池(ほうしょういけ)」という小さな池があります。門前の食堂やみやげもの屋さんは、この池の中に半分足をつっこんだ格好(かっこう)で建てられています。
この池は、めったに池替(いけが)えをしたことはありません。それは、この池にこんな話が残(のこ)っているからかも知(し)れません。

今から70年ばかり前の大正時代(たいしょうじだい)のこと、門前に村の世話役(せわやく)を勤(つと)めていた大芝春之助(おおしばはるのすけ)という人がいました。
ある夏のこと、いつも池の水が濁(にご)っているのが気になる春之助さんは、村人達に「蚊(か)が多いのも、池の水がきたないせいだよ。ながらく池替(いけが)えをしていないから、一度池替えをしてはどうだろう。」と相談(そうだん)をもちかけました。
相談はすぐまとまり、村中(むらじゅう)総出(そうで)で水を替(か)え始(はじ)めました。
水が引くにつれ池の中では魚がピチピチと跳(は)ねています。
様々(さまざま)な魚が沢山(たくさん)とれ、水も殆(ほとん)どなくなりました。
すると、中央の深い泥(どろ)の中に、何やらムクムクと動くものがあります。何だろうと掘(ほ)り出してみると…………それはそれは大きなスッポンではありませんか。
「これは珍(めずら)しい。料理をして皆で酒盛(さかも)りといこう。」ということになり、春之助さんは自慢(じまん)の腕(うで)を振(ふ)るうことになりました。

放生池のスッポンの挿し絵

まず、スッポンの生き血(いきち)を抜(ぬ)き、甲羅(こうら)をはずし、肉をこまぎれに切って平鉢(ひらばち)に盛(も)り付け、土間(どま)の棚(たな)の上に乗(の)せて置きました。
しばらくすると、土間の方からボットン、ポットンと変な音が聞こえてきます。「何だろう」と春之助さんは土間に行ってみると、棚の上のスッポンのこまぎれ肉が、ピクピクと動いて、棚の上から土間に落ち、肉片(にくへん)がそれぞれに動きまわっているではありませんか。
そりゃもう、びっくり仰天(ぎょうてん)血相(けっそう)を変えて、表へ飛びだし、近所(きんじょ)の人を集めて、大急ぎでその肉片を集めて、入れ物(いれもの)共(とも)ども放生池(ほうしょういけ)へ投げ込(なげこ)みました。

その後、肉片がどうなったか、確(たし)かめなかったそうですが、スッポンは生命力(せいめいりょく)が強く、執念深(しゅうねんぶか)い生き物と昔(むかし)から言われています。ひょっとすると、肉片の一切(ひとき)れが、スッポンに生まれ変わり、沢山のスッポンになって、この放生池に住んでいるのかも知れません。

挿し絵は、市内在住・在学の市民、児童・生徒から募集したものです。

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